令和6年度 上小阿仁小学校卒業証書授与式 ~輝く未来へ 色とりどり(Colorful)に羽ばたけ~
令和7年3月14日(金)、上小阿仁村立上小阿仁小学校にて、令和6年度卒業証書授与式を挙行いたしました。
当日は、澄み渡る青空が広がり、春の訪れを感じさせる日差しが校舎を照らしていました。しかし、風はまだ冷たく、肌にひんやりとした空気が残る朝。それでも、6年生の表情は晴れやかで、その胸には温かな想いが満ちていました。
<式本番の前に ー 最後の練習にかける想い>
卒業式の厳かな幕が上がるその直前、時間を少し巻き戻してみましょう。
式開始30分前。保護者との記念撮影を終えた卒業生たちは、通常であれば教室に戻り、心を落ち着けて本番に備えるところです。しかし、今年の6年生は違いました。彼らが向かったのは練習の場。歌や呼び掛けの最終確認をし、一人一人が真剣な眼差しで式の成功を願いながら声を合わせていました。その姿には、最後の瞬間まで「よりよい卒業式にしたい」という強い気持ちがあふれていました。
その光景を目にした校長先生は、胸を熱くしながら卒業生に語りかけました。
「こんな卒業生、今まで見たことがない!式直前まで真剣に練習に取り組む皆さんはすばらしい!」
涙を浮かべながら伝えられたこの言葉から、6年生の式に向けた姿勢がどれほどのものであったのかが伝わります。本番を目前に控えながらも、決して気を緩めることなく挑み続ける彼らの姿に、立ち会った誰もが胸を打たれました。筆者もまた、彼らの「本気」に心を動かされた一人です。
<卒業式開幕 ー 未来へ踏み出す一歩>
いよいよ、卒業生の入場です。
迎える在校生の表情には、誇らしさと寂しさが入り混じっていました。大好きな先輩との別れが近づいていることを感じながら、精一杯の拍手で迎え入れます。
そして、6年生が堂々とした足取りで入場してきました。
その姿は頼もしさに満ち、6年間の歩みの集大成を体現しているかのようでした。緊張を感じさせない落ち着いた表情の中に、「この瞬間をしっかりと刻みたい」という決意がにじみます。
最後の卒業生が定位置につき、入場が完了。式場には凜とした空気が流れます。
続いて、国歌斉唱と校歌斉唱。
会場全体に響き渡る歌声は、6年生への感謝と敬意に満ちていました。特に、低学年の子どもたちが懸命に歌うその声には、「今までありがとう」「大好きな先輩へ届け!」という想いが込められているようでした。小さな体いっぱいに気持ちをのせたその姿は、会場の皆さんの心に刻まれました。
<卒業証書授与~決意表明のとき~>
いよいよ、卒業証書授与の時がやってきました。
壇上に上がると、学級担任から名前が呼ばれます。卒業生は力強く「はい!」と返事をし、真っ直ぐ前を見つめ、中学校生活に向けた決意を高らかに宣言しました。
<決意の言葉>
A:「この6年間で、責任をもって仕事に取り組む大切さを知りました。中学校でも責任をもって仕事に取り組みたいです!」
B:「この6年間で、できるようになったことは、自分の意見をはっきり言うことです。中学校では、何か一つのことに継続して取り組めるようにしたいです!」
C:「この6年間で、人前に立ち、自分の意見を言うことの大切さを知りました。中学生になっても、しっかり自分の意見をもち、発表していけるようにしたいです!」
D:「この6年間で、体育祭の応援合戦や学校祭の劇で、本気で声を出すことの大切さを知りました。中学校でも学習や部活動で本気で声を出して伝えていきたいです!」
E:「この6年間で、協力することの大切さを学びました。中学校でもみんなと協力して、いろいろなことを乗り越えていきます!」
F:「この6年間で、自分なりの考えをもち、場面に合った行動ができるようになりました。中学生になっても自分なりの考えをもち、一つ一つ物事を丁寧に達成していきたいです!」
G:「この6年間で、大きな声で発表することの大切さを学びました。大きな声で発表することで、自分の思いが伝わるからです。中学生になっても大きな声で発表していきたいです!」
H:「この6年間で、自分の意見をしっかりもち、話合いをすることができるようになりました。中学生になっても、自分の意見をしっかりともち、話し合いに積極的に参加したいです!」
I:「この6年間で、自分の意見をもち、発表することの大切さを知りました。そうすることで自分から行動できるようになる判断力が身に付くと思います。中学校に行っても、自分の意見をもつことを大切にして発表していきたいです!」
J:「この6年間で、みんなで一つのことに向かって協力し、挑戦することの大切さを知りました。中学生になってもみんなで協力して挑戦していくことを大切にしていきたいです。」
マイクは一切使っていません。
それでも、体育館の隅々にまで響き渡る大きな声。そこには、彼らの覚悟と誇り、そして未来への強い意志が込められていました。その一言一言が、会場にいた人々の心を揺さぶります。
卒業生たちの力強い言葉に、見守る保護者の目には涙が浮かび、在校生は憧れの眼差しを向けていました。6年間の学びを胸に、新たな道を歩み出す彼らの姿に、誰もが希望を感じた瞬間でした。
<校長先生からの祝辞 〜6年間の歩みを振り返って~>
式辞の中で校長先生は、卒業生一人一人の成長を温かく見守ってこられたことに触れながら、卒業の日を迎えた喜びと、これまで支えてくださった来賓の方々、保護者の皆様への感謝の気持ちを述べられました。そして、卒業生のこれまでの歩みを振り返りながら、それぞれが経験してきた挑戦と成長の軌跡を称えられました。
【5月 〜 体育祭で学んだこと】
5月の体育祭では、卒業生が最上級生としての責任を果たしながら、下級生をまとめることの難しさを実感したことが語られました。応援合戦の練習では、仲間と心を一つにすることの大切さを学び、4・5年生からの温かいメッセージが本番での大きな力となりました。互いを支え合うことの尊さを改めて感じた瞬間でもありました。
【6月 〜 試練の日】
6月には、卒業生にとって「試練の日」がありました。算数の授業で先生の期待に応えられず、悔しさのあまり涙した日。しかし、その経験を通じて、「声を出すこと」の大切さを学びました。自分の思いを伝えることが、仲間と支え合う上でどれほど重要であるかを実感した瞬間でした。
【9月 〜 修学旅行での学び】
9月の修学旅行では、事前の準備を重ねたことで、より充実した時間を過ごすことができました。函館の街では、楽しさの中にも礼儀や誠実さを忘れずに行動し、仲間とともに眺めた函館山からの夜景は、心に深く刻まれる思い出となりました。
【10月 〜 仲間と創り上げた行事】
10月には、自分たちの手で作り上げた行事を成功させたことにも触れられました。何もないところから試行錯誤を重ね、一つひとつ丁寧に積み上げることで道が開けることを実感した経験でした。「ピンチはチャンス」「失敗は成功につながる」—— そうした前向きな姿勢が、未来を切り拓く力になると校長先生は語られました。
【11月・2月 〜 交流を通じての成長】
11月と2月には、八郎潟小学校や阿仁学園との交流活動が行われました。インターナショナルデーEXでは、異文化に触れながら発信力を磨き、互いに刺激を受けながら成長していく姿が印象的だったと述べられました。
【2月14日 〜 卒業を前にした「自分物語」】
卒業を間近に控えた2月14日、雪が降りしきる中、卒業までのカウントダウンが19日と記された黒板を見つめながら「自分物語」の発表が行われました。卒業生は自らの内面と向き合い、弱さを乗り越えるための言葉を紡ぎました。その時間が、これからの人生において大きな糧となることを、校長先生は確信しておられました。
【旅立つ卒業生へ 〜 ノーレイン、ノーレインボー】
校長先生は、卒業生が歩んできたこれまでの学校生活を振り返り、それぞれが個性を輝かせながら切磋琢磨してきた時間だったと語られました。そして、今日という日を迎えた10名の卒業生は、まるで虹のように鮮やかに輝いていると称えられました。
最後に、「ノーレイン、ノーレインボー」という言葉が卒業生に贈られました。「雨が降らなければ虹は決して現れません。これまでの困難や悔しさ、流した涙があったからこそ、今の皆さんは輝いています。」校長先生はそう語り、これからの中学校生活でも困難に立ち向かいながら、新たな虹を描いてほしいと力強く励まされました。
<ご来賓あいさつ>
卒業生の門出を祝し、村長さんとPTA会長さんから温かいメッセージが贈られました。
まず、村長さんは、卒業生の皆さんがこの6年間で多くの経験を積み、知識を深め、心身ともに大きく成長したことに触れられました。その成長は、卒業生自身の努力はもちろん、先生方や保護者の方々、地域の皆さんの支えがあってこそであると述べられました。
また、「人に喜ばれることとは、自分がされてうれしいことをすること」との考えを示され、人を思いやり、行動することの大切さを強調しました。上小阿仁小中学校の子どもたちの元気なあいさつが村の活力になっていることを伝え、「中学生になっても挑戦を重ね、新たな毎日を築いてほしい」とエールを送られました。さらに、大谷翔平選手の「成功や失敗に関係なく、やってみることに意味がある」という言葉を紹介し、挑戦することの意義を説かれました。村としても、夢に向かって努力する皆さんを応援し、教育環境の更なる充実に努める決意を示されました。
続いて、PTA会長さんは、少人数だからこそ生まれた卒業生同士の強い絆と、その中で培われた洗練された社会性に驚きと喜びを感じたと述べられました。学校や家庭、地域でのさまざまな経験を通じて身に付けた強さと優しさは、これからの人生において大きな財産となることを伝え、「これまで積み重ねてきた力を信じて、新たな挑戦へと踏み出してほしい」と力強い言葉で卒業生を激励されました。
挑戦することの大切さ、そして支え合いながら成長することの尊さ。
村長さんとPTA会長さんの言葉は、卒業生の皆さんの未来への大きな励みとなったことでしょう。
<感動のクライマックス~卒業生と在校生による呼び掛け>
いよいよ卒業式の最終章。
卒業生と在校生による呼び掛けが始まりました。
卒業生の一言一言には、これまでの思いが詰まっており、その言葉がまっすぐに聴く者の胸に響きました。
それに応えるように、在校生もまた凜とした態度で感謝の思いを伝えました。小学校低学年の児童でさえ、一糸乱れぬ動きで起立や着席をやり遂げ、全校児童が心を一つにして式をすばらしいものにしようとする姿勢に会場は感動に包まれました。
大好きな後輩へ、尊敬すべき先輩へ・・・
互いへの感謝があふれた、かけがえのないひとときとなりました。
以下に呼び掛けの全文を写真と共に掲載いたします。
当日の感動が少しでも伝われば幸いです。
【卒業生】
「喜びと希望に満ちあふれた朝が私たちに訪れました。小学校での6年間が終わり、新しい一歩を踏み出す今日、3月14日、私たち10名は、上小阿仁小学校を卒業します!」
【1年生】
「6年生のお兄さん、お姉さん。私たちが入学した4月、朝の準備を手伝ってくれました。休み時間になると一緒に遊んでくれました。私たちは6年生が大好きです!」
【2・3年生】
「掃除やなべっこ会などの縦割り班活動、困っているときには優しく教えてくれました。みんなで力を合わせた体育祭。6年生のアイディアがたくさんつまった応援合戦。心を一つにすることのすばらしさを教えてくれました。協力し合うことの大切さを忘れずに、これからもがんばります!」
【4年生】
「委員会活動や集会活動では、積極的に意見を出し、みんなの考えを取り入れながら話合いを進めるなど、いつも先頭に立ち、私たちをリードしてくれました。全校のことを考えて行動する姿は、私たちのあこがれです!」
【5年生】
「数々の栄光の足跡を残してくださった6年生。いつもみんなのお手本となってくださいました。私たちはみなさんから学んだことを生かし、この上小阿仁小学校の歴史と伝統を受け継ぎます!中学生になっても、勉強に部活動に、大いに活躍してください!」
【卒業生】
「ありがとう、在校生のみなさん。校門をくぐったあの日から6年、思い出のアルバムをめくると、数々の思い出がよみがえってきます。1年生、ランドセルに大きな夢をつめこんで、ドキドキワクワクした入学式。初めての学校祭、にんにんにんじゃを楽しく発表しました。2年生、少しだけお兄さん、お姉さんになった私たち。生活科の村探検でローソンのバックヤードを見学しました。発見する喜びに、あふれていました。3年生、理科や社会、こあに学習など、新しい学習が始まりました。こあに学習では、上小阿仁村名産、ほおずきを育てました。自分たちで育てたほおずきの味は 格別でした。4年生、初めての宿泊体験学習、シーカヤックや磯釣り体験を通して、海の素晴らしさを実感しました。5年生、ついに高学年の仲間入り。6年生をサポートしようと、クラブに委員会に一生懸命取り組みました。6年生ありがとう集会では、全校を動かすことの難しさと協力することの大切さを知りました。そして迎えた最高学年、6年生。全校のリーダーとして、どんなことにも一生懸命取り組みました。本気で声を出すことの大切さを知った体育祭。函館の魅力を肌で感じた修学旅行。アイディアを出し合い、創り上げ、演じ切った学校祭の劇。十人十色、一人一人違いますが、自分のできることを精一杯にやり遂げ、達成感を味わいました。この10名で過ごした小学校生活は、決して色あせることのない一生の思い出です!」
「一生の思い出です!」
静かに音楽が流れ出します。
<卒業の歌~「変わらないもの」>
力強い男子の歌声、透き通るように美しい女子の歌声――。
思いを込めて歌うその声は、体育館いっぱいに広がり、心を揺さぶります。
曲が終わると、卒業生による感謝の呼び掛けが続きました。
【卒業生】
「これまでの12年間、私たちを支え、育ててくれた家族のみなさん。私たちと向き合い、ご指導くださった先生方。優しく声をかけ、毎日見守ってくださった地域のみなさん。本当にありがとうございました!私たちは、今日のよき日を胸に刻み、大きな夢と希望を胸に明日に向かって旅立ちます!」
先生方や保護者のみなさん、地域のみなさんへ、卒業生たちは全身全霊で感謝の思いを伝えました。
会場にいた人々の中には、こらえきれず涙を流す姿も。すすり泣く声が静かに響き渡るほど、心揺さぶられる瞬間でした。
【卒業生】
「旅立ちます!」
卒業生が力強くそう宣言すると、在校生たちは一斉に音も立てず「スッ」と立ち上がりました。
【卒業生】
「ありがとう、上小阿仁小学校!さようなら、上小阿仁小学校!」
【卒業生】
「さようなら!」
【在校生】
「さようなら!」
【全員】
「さようなら!」
<全校合唱~羽ばたこう 明日へ>
最後の歌が始まります。
幼い在校生たちは涙をこぼしながらも、精一杯の声で、大好きな先輩たちに思いを届けようと懸命に歌い続けました。体育館に響き渡る歌声は、まるで卒業生の背中をそっと押すかのように、温かく力強く響き渡ります。まさに、感動の嵐が巻き起こった瞬間でした。
<最後に>
ご臨席いただいたご来賓の皆さまからも、「素晴らしい式だった」とのお言葉を頂戴しました。
振り返ってみても、本当に心に残るよい卒業式であったと感じます。
しかし、その感動は、目に見えるものだけではないのかもしれません。
式の素晴らしさは、当日の姿のみにあるのではなく、そこに至るまでの道のりにこそあるのではないでしょうか。
卒業式の練習だけではなく、日々の学びの積み重ね、10人の仲間との絆、担任の先生との深い信頼関係。どれほどの困難を乗り越え、どれほどの喜びを分かち合ってきたことでしょう。互いに励まし合い、支え合いながら歩んできたその道があったからこそ、あの日、あの瞬間に、あれほど心を打つ卒業式が生まれたのだと思います。
ご卒業、本当におめでとうございます。
これまで温かく見守り、支えてくださった保護者の皆さま、地域の皆さまに心からの感謝を申し上げます。どうかこれからも、上小阿仁小学校の子どもたちの成長を、温かく見守り続けてくださいますよう、心よりお願い申し上げます。